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見ていたくなる。理由は知ってる。この人の目がその答えを無言で物語っている。
極力モンブランに集中しつつも、視界の隅では瀬名さんがふと動いたのを捉えた。思わず顔を上げる。この人の右腕がこっちに伸びてくる。
その手が、届いた。口元に。いくらか控えめに親指で触れて、クイッと撫でるように口の端を掠めた。
瀬名さんの指先にはモンブランのクリームが。
「あ……」
「ゆっくり食え」
「…………」
最悪。
すぐに視線を逸らそうとしたけど、そこであり得ないものを目にすることに。
「ちょっ……」
ペロッと、舐めた。指先についたクリームを。
滅多に触れてこない人が、何食わぬ顔をしてそれをやった。
「甘いな」
言葉に詰まる。今度こそ逃げるように俯いた。
ジワジワと熱くなるこの顔が赤いのは、間違いなくバレている。
「どうした」
「……いちいち恥ずかしい人だなって」
「お前にしかやらねえから安心しろ」
「…………」
余計に恥ずかしくなった。
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