隣人とゴハン

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 食材が箱で届いた。何やらちょっと良さそうな感じの。野菜とか米とかが色々どっさりとしこたまに。  一緒に箱の中に入っていたチラシには、国内産だとか完全無農薬だとかの謳い文句が強引すぎない程度に明記されている。普段は特売価格の野菜しか手に取らない俺にだって、これがワンランク上の食材である事くらいは容易に想像がついた。  そのお届け物を見てから約一時間後。俺の部屋のインターフォンが鳴らされた。  ズカズカと出向いてみれば思った通りそこには瀬名さん。長身のこの人が可愛いサイズの紙袋を持って立っている。 「よう」 「どういうつもりですか」 「今日はオレンジタルトにしてみたんだが」 「そうじゃない。いや、それもおかしいんですけど。なんかスゲエ色々届きましたよ、あなたから」  届け物の送り主は言うまでもなくこの人。隣の部屋に住んでいる男に、わざわざ宅配便を使って大量の食材をお届けされた。 「勝手に人んちの住所を届け先にしないでください。つーかなんなんですかあの野菜の山」 「この前の夕食の礼だ。好きに使えばいい」 「スーパーじゃ見かけないようなヤツばっか入ってましたよ。逆にああいうのどこで探してくるんです。俺にはあの野菜がなんて名前なのかも分かりません」 「俺も良く知らないから一通り買った」 「…………」  こんな所に住んでいるけどこの人は金銭感覚が庶民じゃない。
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