隣人とゴハン

4/11

6441人が本棚に入れています
本棚に追加
/1322ページ
「ダメにしちゃうのも勿体ないので……しばらくウチでどうですか。晩メシ」  だから誘った。俺から。これで伝わるだろうと思って口にした言い回しだった。しかし瀬名さんは微かに眉をひそめ、どう見ても理解していない顔をして見返してくる。  クソ。なんて面倒くさい大人だ。全然伝わってない。 「……あなたがくれた材料で俺がメシ作るので一緒に食いませんかって……聞いてるつもり、なんですけど」  そこまで言うと瀬名さんの目がいくらか見開かれた。ついこの前にもこの人の、こんな表情を見たばかり。  ぽかんと呆けて、なんだかちょっと、打ちのめされでもしたかのような。 「……いいのか」 「ええ。あなたさえよければ」 「…………」  あれだけ食事食事とうるさかったくせになんなんだその反応は。いざ俺から誘ってみればビックリされるというこの不可解さ。  今も前回も失礼極まりない。さっきまでの押しの強さはどこに旅立ちやがったんだ。 「……すまん。そんなつもりじゃなかった」 「なんでいきなり弱腰になるんですか」  この人は大概ズレてる。
/1322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6441人が本棚に入れています
本棚に追加