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「ダメにしちゃうのも勿体ないので……しばらくウチでどうですか。晩メシ」
だから誘った。俺から。これで伝わるだろうと思って口にした言い回しだった。しかし瀬名さんは微かに眉をひそめ、どう見ても理解していない顔をして見返してくる。
クソ。なんて面倒くさい大人だ。全然伝わってない。
「……あなたがくれた材料で俺がメシ作るので一緒に食いませんかって……聞いてるつもり、なんですけど」
そこまで言うと瀬名さんの目がいくらか見開かれた。ついこの前にもこの人の、こんな表情を見たばかり。
ぽかんと呆けて、なんだかちょっと、打ちのめされでもしたかのような。
「……いいのか」
「ええ。あなたさえよければ」
「…………」
あれだけ食事食事とうるさかったくせになんなんだその反応は。いざ俺から誘ってみればビックリされるというこの不可解さ。
今も前回も失礼極まりない。さっきまでの押しの強さはどこに旅立ちやがったんだ。
「……すまん。そんなつもりじゃなかった」
「なんでいきなり弱腰になるんですか」
この人は大概ズレてる。
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