隣人とゴハン

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 話しながら作業を進め、丁度良く煮立ったところで鍋の火を止めた。二人分の器を取りだし、二人分の食事をよそう。  やはり作るのであればこのくらいの量が丁度いい。そう実感しつつ、顔は鍋へと向けたまま瀬名さんに呼びかけた。 「瀬名さんは俺に構ってないでもっと自分に尽くした方がいいと思いますよ」 「なぜ」 「なぜって……」  なぜも何もない。しかしそう思うのは俺が常識の中で生きているから。  あいにく俺が話している相手はそうじゃない。ちょいちょい常識から逸脱したがる不可解な大人の男だ。 「恋しくてたまらない奴が隣の部屋に住んでる。しつこくつきまとう男の話にもいちいち付き合うような律儀な奴だ。そんな可愛い奴が自分の近くにいたら毎日でも構いたくなるのは当然だろ」  理解不能なこの人は当たり前のように並べ立てた。その次にはその場で立ち上がり、押し黙る俺のすぐ近くまで足を進めてくる。  あとは料理を運ぶだけ。そんな時にさり気なく向かってきたこの人。 「持ってくぞ」 「え、あ、はい。どうも。お願いします」  盛り付けたばかりの皿を指さされ、そうやって頼めば快く引き受けてくれる。てきぱきと、それでいて静かに動く瀬名さんを横目に盗み見、姿勢のいいその後ろ姿を視線だけで追いかけた。
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