酸っぱいやつと甘いやつ

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***  二度目の口実を手に入れたから、それからも懲りずに夕食を作った。食後も即解散にはならずにどうでもいいような雑談を交える。  晩メシを作っている最中も話して、食っている時にも話して、それでも飽き足らずに食い終わった後にもなんやかんやと話し込む。  話題が尽きた事はなかった。この人がここにいると自動的に話したい事が出てくる。そうやって俺達が言葉を交わす時間は少しずつ、日を重ねるごとに長くなった。  はじめの頃はずっとダイニングで。いつの日かを境にして、引き戸の向こうの寝室になった。  広くはない安アパートの、最もプライベートなスペース。そこにこの人が入る事をどうしても嫌だと思えない。  枕元にいるクマを初めて見たとき、瀬名さんは嬉しそうな顔をして笑った。それが恥ずかしくて、俺は知らんふりをしてそっぽを向いた。  何も言わずに頭を撫でられたのが、この部屋での最初の出来事。それからさらに一週間が経った。今夜も俺達はここで話してる。
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