酸っぱいやつと甘いやつ

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 ここは寝室。一番のプライベート空間。後ろにはベッドがあって、この人と同じく俺は男だ。  お茶淹れます。持っていくのでそっちで待ってて。最初にそう言ったのは俺だった。  ダイニングテーブルではなくて、引き戸越しの寝室を指さして言った。瀬名さんが勝手に踏み込んだんじゃない。俺がここへ入るように言った。  だからもしもベッドのある部屋で仮に何かが起こったとしても、この人だけを責める資格が俺には多分ないだろう。十割の責任転嫁は不可能。なぜなら俺は女じゃないから。  状況を判断する時に、物事の捉え方は男と女で微妙に違う。そういうもんだ。そうだと知ってる。  女の子ではない俺は、男を正当化する思考を持ってる。 「……梅干し一色にしてやります」 「やってみろ。俺なら全部受け止められる」 「…………」  正当化される状況があっても、この人が俺に与えるのは猶予だ。
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