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お茶か紅茶かコーヒー。もしくはミネラルウォーター。ウチで出せる飲料物だ。酒は買わないから一つも置いていない。そもそも未成年だし、好きでもないし。
酒とかあった方がいいですか。瀬名さんに一度聞いてみた事がある。食事中でも食後でも、飲みたいなら俺に気を使う必要はないからと。
その時の瀬名さんからの答えはノー。基本的に飲まないらしい。飲めない訳ではないようだが、付き合いでもない限りは酒との縁が全く無いそう。煙草は吸うが酒はそうでもない。それが瀬名さんの嗜好だった。
「空き缶とかでよければ出します?」
「あ?」
「いえ、灰皿用に。吸いたいんじゃないですか?」
「……いや」
サラリーマンの日常なんて俺には分からない。けれど毎日煙草を吸うような人は一定間隔で吸いたくなっているようなイメージがある。だから訊ねてみたものの、瀬名さんはここでも首を左右に振った。
寝室に煙が漂ったところで特に気にしない。遠慮する事は何もないのに、しかしそう言えば瀬名さんが煙草を吸っている姿を俺は一度も見たことがなかった。
吸っている時の煙がゆらゆらと舞っているなと、ベランダに踏み出た時に気付いた事があっただけ。そしてそれでさえもすぐに消される。そんな事をふと振り返った。
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