残念な大人

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 この大人は話せば話すほど最初の印象とは異なる顔を見せてくる。煙草の煙を気にしてくれる人であるのは分かっていた。だが俺と自分の年齢を比べて引け目に感じるとは知らなかった。 「瀬名さんはなんかちょっと、俺のイメージとは違う人だったかもしれません」  思ったより普通の人だった。瀬名さんは手にしていたマグカップをテーブルの上に戻して、興味のあるような目を向けてくる。 「どう違ったんだ」 「いえまあ、なんて言うか。最初はひたすらクソ腹立つ大人だなって感じだったんですけど」 「口悪いなお前」 「あんたも人のこと言えませんよ」  地方出身者同士その辺はお互い様だろう。  クソ腹立つ大人であるのは今だって変わらない。行動には隙がなくて捉えどころがないし、仕事が出来そうなお兄さんは驕る事を決してしないから逆にそれがイヤミだし。  人の話を聞かないようでいて実はよく聞いている。不真面目な口振りとは裏腹にその内側はどこまでも誠実。一言でまとめるなら良く分からない人だ。だから俺とは違う所で生きているような気がしていた。 「それで、今は?」  でも今は。今の、この人に対する印象は。  時々変なところで弱腰になる人。学生の俺を見下すどころか、自分の年を気にするような人。そういう人を前にして、俺がひとつ思うことは。
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