5 メシマズ写真家

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俺は苦笑した。この間ブログを教えたからそれを見たのだろう。閑散としたブログだが料理写真を載せるとページビューは150ほどは行く。   「ねえ。コーヒーカップ撮ってみて」 俺はスマホを近づけてコーヒーカップを撮影した。撮れた画像には大きく左右が間延びしたコーヒーカップが写っていた。それをみた華乃は「じゃあ今度はこの辺の位置から、スマホを構えて。そんなに近づけないで。このくらい」と丁寧に俺のスマホに手を添えて位置を直してくれた。俺はスマホのシャッターを押した。 「おお、普通のコーヒーカップだ」 「ちゃんと撮れたでしょ? 写真て直に教わらないと撮れるようにならないのよ」 だからメッセージのやり取りだけで会うっていうのか。俺は反論する。 「本とかネットとかあるじゃん」 「やってみたら?」 「上手くなったらどうする?」 「スクランブル交差点を逆立ちして渡ってあげる」 くっくっと笑いをかみ殺しながら辛辣なことをいう華乃は可愛い。 *** 俺はある日、ネットをふらふらと彷徨っていてある言葉をみつけた。 「メシマズ写真が話題」 へええ、それってどんなん? と単純な興味でリンクをみて、俺はびっくりした。口を半開きにしていたらしい。だらりとヨダレが垂れたのに気づき、慌てて口を閉じた。  そこには俺が撮った写真が並んでいた。『K』と半透明な文字で署名が入っている。     
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