5 メシマズ写真家

1/3
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

5 メシマズ写真家

 華乃さんから華乃ちゃん、そして華乃、と3ヶ月ほどの間に3度呼び方が変わった。彼女も俺のことをいまでは何のためらいもなく「圭」という。  付き合い始めの頃、華乃はいかに自分がkeiのコメントを待っていたのかを少し恥ずかしそうに話してくれた。少々複雑な気持ちだったが、本当のことはこの際話さなくてもいいだろう、と俺は華乃の美しき誤解を解くことはしなかった。本当のことを話して華乃が傷つくのも悲しむのもいやだった。  あの日以来、俺と一緒のときは華乃は食事前の写真撮影をしない。その気遣いが嬉しい。 「今度、Linkで知り合ったオバサマたちに写真教えるの」 嬉しそうに華乃が俺に報告する。 「そういうの怖くない?」 ホットコーヒーをブラックですすりながら、彼女は俺を見た。 「どういうの?」 「見知らぬ人と会うこと」 華乃は、keiこと恭一とメッセージのやりとりだけで会うことを決めた。それがちくちくと俺を刺激する。 「別に。写真のことで会いたいって言われたら誰とでも会うわ」 「危ないじゃん」 「心配してくれるんだ」 嬉しそうにいいながらキツイ一言が飛んできた。 「圭の撮る食べ物の写真て本当にまずそうよね」     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!