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5 メシマズ写真家
華乃さんから華乃ちゃん、そして華乃、と3ヶ月ほどの間に3度呼び方が変わった。彼女も俺のことをいまでは何のためらいもなく「圭」という。
付き合い始めの頃、華乃はいかに自分がkeiのコメントを待っていたのかを少し恥ずかしそうに話してくれた。少々複雑な気持ちだったが、本当のことはこの際話さなくてもいいだろう、と俺は華乃の美しき誤解を解くことはしなかった。本当のことを話して華乃が傷つくのも悲しむのもいやだった。
あの日以来、俺と一緒のときは華乃は食事前の写真撮影をしない。その気遣いが嬉しい。
「今度、Linkで知り合ったオバサマたちに写真教えるの」
嬉しそうに華乃が俺に報告する。
「そういうの怖くない?」
ホットコーヒーをブラックですすりながら、彼女は俺を見た。
「どういうの?」
「見知らぬ人と会うこと」
華乃は、keiこと恭一とメッセージのやりとりだけで会うことを決めた。それがちくちくと俺を刺激する。
「別に。写真のことで会いたいって言われたら誰とでも会うわ」
「危ないじゃん」
「心配してくれるんだ」
嬉しそうにいいながらキツイ一言が飛んできた。
「圭の撮る食べ物の写真て本当にまずそうよね」
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