滅亡の誕生

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 出産の瞬間。それは誰もが祝福の気持ちに満たされる生命誕生の刻であるし、そうでなければならない。  だが、それは決めつけに過ぎない。もはや誕生を祝う者など誰もいない。これから生まれ来る子らは、我々「旧人類」にとって、""絶望"、"破滅"そして"滅亡"しかもたらさないのだから。  それが初めて確認されたのは、とある小さな地方病院の、産婦人科の分娩室だった。 「うわ、わあ、あああああ」 「きゃあああああ! これナニ、ナニコレ、いやあああああ!」  それの出産時、分娩室に鳴り響いたのは、あかちゃんの産声ではなく、医師と看護師の悲鳴だった。 「あかちゃん……、わたし、の、あか、ちゃん……」  その瞬間、母の始まりを迎えた女性は、代わりに人生の終焉を得ることとなった。 「バリバリ……ムシャムシャ……クチュクチュ……ごくん」  陣痛は激烈だった。予定日を遥かに超過してようやく訪れた出産の予兆は、妊婦をのた打ち回らせるほどの痛みだった。救急車で緊急搬送され、分娩室に運び込まれた数分後の出来事だ。 「おいしい……? お母さん、おいしいの……?」  分娩台に横たわる母の目は虚ろで、何も映してはいなかった。体の神経は麻痺し、何も感じない。ぼんやりとした触感や音で、母は自分が"食べられている"のを確信していた。  あかちゃんは、母のお腹を食い破り、外の世界に這い出て来た。そしてすぐに、母の腸を引きずり出して貪り始めた。見た目は普通のあかちゃんだ。ただ、歯だけはすでに生え揃っていた。ここだけが異質だった。
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