滅亡の誕生

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 蜘蛛の中には、子に自分を食べさせて育てる種がある。これはそれに良く似ていた。母蜘蛛は抵抗せず食べられるに任せるのだが、このあかちゃんの母も、抵抗する気は無いようだ。大量の失血による死に至るまで、母は恍惚とした表情のままだったのだから。  お腹がいっぱいになったのか、食べるのをぴたりと止めたあかちゃんは、当たり前のようにすっくと立ち上がった。そして。 「うおおおおーん……うおおおおーん……」  すでにこと切れた母の顔に覆い被さり、泣いた。もう絶対に自分を見てくれることの無い閉じた瞳を、犬のように舐めていた。到着した現場の惨状に気が触れた警官に、母の血で真っ赤に染まったあかちゃんが射殺されるまで、ずっと泣いていた。  
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