第23話  たまんねぇ感覚

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「そうだね。ちょっと変だったよね」 「去り際にポツリと『この記憶さえあれば』なんて言ってましたけども……」 「すぐにでも忘れた方が良いんじゃないかな」 僕もピンと来てないけど、たぶんロクでもない話だと思う。 聖職者相手になんて事を言うんだか。 ……そういえば、この子は一応聖職者なんだよなぁ。 これまでの態度のせいで、たまに忘れそうになるよ。 「レインさん。どうですか?」 「どうですって、何が?」 「ここいらで1度、荒れ狂うオオカミになってみませんか?」 「うん、ちょっと何言ってるかわかんないな」 「言い方を変えましょう。若さゆえの過ちをここで……あら?」 「オリヴィエさん、大丈夫?」 立ち上がろうとした彼女がお湯の中に倒れ込んでしまった。 体を起こさせると、妙に頭をフラフラとさせている。 「湯あたり、でしょうか? なんだか頭が……」 「そうなんだ。もう出た方が良いね」 「体から力が抜けてしまって。おぶって貰えませんか?」 「わかったよ。無理しないでいいからね」 「どうもすみません」 いつもの感覚で安請け合いしてしまったけど、彼女は一糸纏ってない姿だった。 それはつまり、ダイレクトという事だ。 何がとは言わないが、直に当たるのだ。     
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