第23話  たまんねぇ感覚

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「そうですが……もしかして男性の体の方が見たいタイプですか?」 違います! 僕はそういう人ではありません! 今のは僕の視線の先を気にしてのコメントだったのか。 気まずくなり出した空気をごまかすように、僕たちはお湯に浸かった。 「ちょっと熱いけど、気持ちいいねぇ」 「そうですね。1度慣れてしまえば良い具合ですね」 旅の疲れが溶けていくような心地だ。 体も弛緩しきって、自然と手足が投げ出される。 オリヴィエも同じ気持ちなのか、とてもリラックスしているみたいだ。 「あら、これはいったい……?」 「うん? 何かあったの?」 「あちらのお爺さんたちの様子が……」 「あー……うん。どうしたんだろうね」 先客の2人の様子が確かにおかしかった。 ひとりは空を見上げて涙を流し、もうひとりは震える両手を高く掲げている。 やたらプルプルしてるけど、それはガッツポーズで良いんだろうか。 「本人に聞いてみましょうか?」 「いや、そっとしといた方が良いと思うよ」 「何やら『生きてて良かった、冥土の土産が出来た』と言っているようですが……」 「絶対そっとしといた方が良いよ」 それからその2人はこちらに深々と頭を下げて、風呂からあがっていった。 今の態度はどう受け止めたらいいんだろう。 「変わった方々でしたね」     
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