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第24話 価値観の崩壊
片田舎の村の道端にて。
そこには不機嫌全開の溜め息が辺りに響き渡っている。
それは自然に漏れたと言うよりは、周りに知らしめたいかのようであった。
「人里離れた場所に期待したけど、完全に空振りじゃないの」
魔術師ミリィは大層不機嫌だ。
お眼鏡に叶うようなダンジョンも、稀少な魔物も見つからないからだった。
長い髪をしきりにかきあげて不機嫌を露にしている。
普段から雑に扱われているが、彼女の真っ赤な髪はしなやかで美しかった。
「こんな人の居ない村でも男ってヤツは……。うっとおしいったらないわよ」
これも彼女の不機嫌さを助長していることだ。
その持ち前の美貌から、常に見知らぬ男たちを寄せ付けてしまう。
魔術の研究に没頭したい彼女にとっては、ありがた迷惑以外の何物でもない。
この村に限ってはヨボヨボの年寄りが言い寄って来るというイレギュラーが起きたものの、概ねいつも通りだった。
「あぁ、退屈。なんかこう……ガツーンと来ることはないかしらね?」
彼女は飽き飽きしていた。
底の知れた男たちからの安い求愛に。
目を瞑っていても撃退できる魔物たちに。
自分の想定を越えることのない、この世界に。
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