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その頃、由希乃のバイト先、本屋の向かいにあるお弁当屋さんでは――
「今年のx高の文化祭、そろそろ屋台のネタ決まってるんじゃないか? 仕入れのリスト作らないといけないだろ」
弁当屋の店主が、甥っ子の多島くんに訊ねた。
由希乃の通うx高の飲食系資材の仕入れは、ほとんどこの店の仲介で行われているのだ。
「あー、生徒会からFAX来てますね。ふむふむ……。今年は焼きそば少ないな。去年盛大に鉄板焦がして怒られた組がありましたからねえ。なるべく失敗しない方向で選んでるようです」
「若いんだからチャレンジすりゃいいのに」
「食べ物を粗末にされるよりいいでしょ。そういうのは別の機会にチャレンジすればいいんです」
「んだよ若いのにジジ臭いこと言うなよ、勝也」
「叔父さんがガキっぽいだけですー」
「そういや、由希乃ちゃんの高校もここだったな。行くのか?」
「いや、聞いてないっすね。まあ当人が来て欲しいなら誘うでしょ」
「んだよ誘われろよ」
「ムチャ言わないで下さい。文化祭の忙しさも知らないで。いたずらに知人を呼びつけても、相手が出来ない部署だったらどうすんです 。無責任でしょ?」
「……なんだ、経験ある言い方だな」
「まあね。別に俺は毎日彼女の顔見てるから、わざわざ学校まで行かなくてもいーですし?」
「おー言ってくれるな」
「「ははは」」
とはいえ、ちょっとは気になる多島くんだった。
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