1 クラスの出し物

2/2
前へ
/12ページ
次へ
 その頃、由希乃のバイト先、本屋の向かいにあるお弁当屋さんでは―― 「今年のx高の文化祭、そろそろ屋台のネタ決まってるんじゃないか? 仕入れのリスト作らないといけないだろ」  弁当屋の店主が、甥っ子の多島くんに訊ねた。  由希乃の通うx高の飲食系資材の仕入れは、ほとんどこの店の仲介で行われているのだ。 「あー、生徒会からFAX来てますね。ふむふむ……。今年は焼きそば少ないな。去年盛大に鉄板焦がして怒られた組がありましたからねえ。なるべく失敗しない方向で選んでるようです」 「若いんだからチャレンジすりゃいいのに」 「食べ物を粗末にされるよりいいでしょ。そういうのは別の機会にチャレンジすればいいんです」 「んだよ若いのにジジ臭いこと言うなよ、勝也」 「叔父さんがガキっぽいだけですー」 「そういや、由希乃ちゃんの高校もここだったな。行くのか?」 「いや、聞いてないっすね。まあ当人が来て欲しいなら誘うでしょ」 「んだよ誘われろよ」 「ムチャ言わないで下さい。文化祭の忙しさも知らないで。いたずらに知人を呼びつけても、相手が出来ない部署だったらどうすんです 。無責任でしょ?」 「……なんだ、経験ある言い方だな」 「まあね。別に俺は毎日彼女の顔見てるから、わざわざ学校まで行かなくてもいーですし?」 「おー言ってくれるな」 「「ははは」」  とはいえ、ちょっとは気になる多島くんだった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加