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「うん?」
微かに音が聞こえ振り向くと、通路には誰もいなかったがヒタヒタと素足で歩くような不気味な音が消えない。
「どうなってんの?!」
真っ暗の中足音だけ近づいているので、瑠里は私の袖を掴んだが、犬螺眼を持つ私は天井を凝視して拳を握っていた。
「聞いてないんだけど……ここにお化けが出るなんて」
「いやなに、普通ですよ、こちら側の河童人間は足が特殊に出来てますからの」
お化けではないとホッとしたが、瑠里に説明する前に天井を歩く河童がライトを取り出し、侵入者に照らされた。
「な、何者だ貴様ら!」
向こうもこちらを見て驚いたのかもしれないが、声が意外と低音だったので、瑠里は完全に私の背中に隠れている。
まずは落ち着かないと説明を聞く態勢になれないと思い、瑠里の手を引いてダッシュし奥の部屋の前に移動した。
振り向くと追って来てはいるがこちら程スピードはないので、ここの河童の特技はあれだと指差すと、瑠里はマスクの中で大きく息を吐いた。
「もう灯りつける?あんたらは化け物だから暗闇でも視界クリアだけど、こっちは普通の忍者だから」
「でも意識を集中すると、気配は同じ早さで察知出来ると思うぞ?それぞれにチカラ……」
朧が説明を打ち切り、背後のドアが静かに開くと同時に異臭が増し、マスクでしっかりと覆い直した。
「ネズミが紛れたようですが、どう致しますか?」
中に返事を求めこちらに向き直った時には、五人くらいの河童人間も出てきたが、どれも目つきが魔物にしか見えない。
蝋燭の明かりだけの部屋の中は薄暗く、囲まれた化け物達に無言の圧力で、中に入れの視線を感じた。
「とりあえず、従いましょうか」
こんな時でも冷静な少女というか朧はスッと入るので渋々続くと、鳥肌が立ちそうな位、居心地が悪い場所だった。
床や壁には明らかに血が飛び散った痕跡があり、最近の物ではないどす黒い色も混ざっていた。
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