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中央には拷問に使うような特殊な椅子と器具が並べられているが、その周りだけは綺麗に掃除されている。
隣に簡易ベッドもあるが、固定出来る様ベルトが沢山ついていて、綺麗に磨かれた工具が不気味さを更に醸し出していた。
匂いとこの部屋の光景を見ただけで吐き気がしそうだが、それ以上に心臓の辺りが熱くなるのを感じ、口を開いていた。
「あんた、この部屋で一体何してんの?」
化け物に囲まれ一人静かに座っていた飾磨を睨みつけながら聞くと、涼しい顔で返事をされた。
「――悪魔を狩ってただけ」
「……出たよ姉さん、面倒臭いタイプだよこれ、頭おかしいパターンでしょ」
「うわっ最悪、ゾンビゲームでも村長がこういう雰囲気出してたよね」
この部屋で誰かが殺されたのは一目瞭然だが、頭がおかしい敵だった場合、話などせずサッサと執行した方がいいのか迷ってしまう。
「明らかに狂ってるし、執行するべきだよ」
瑠里が双棒を持ち構えると、飾磨の表情が歪み立ち上がったので、私もリュックの下に手を伸ばした。
「失礼な女達だ!俺がおかしい……だと?お前達みたいな悪魔は部屋から出す訳にいかない」
「やかまし――んだよ!都合が悪くなると悪魔のせいにするな、アンタのやってる事考えてみろ!」
「今回は般若のいう通りだよ、悪魔はお前だ!」
臭い部屋の中で言い合いをしたくないが、飾磨が一瞬目を見開いたので、念の為に心臓の辺りを確認してみる。
魂の色が黒なら安心して執行でき、今まで何度か見ていて、後ろにはチカラをくれた狐もいるので答え合わせも出来る。
「――えっ?!」
黒だと確信していたのに、見えたのは『青』で初めての色に動揺したのもあるが、これが善なのか悪なのか分からなくなってしまった。
「これ、どういう事?」
「手の施しようのない悪人は『黒』のみ、それ以外は何等かの事情があったりするが……イザリ屋には関係ない事じゃろうの」
瑠里はなぜ攻撃に入らないのか不思議そうだが、飾磨が助言を求める様に耳打ちする、老人の心臓に目をやり納得した。
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