河童の里で栗拾い

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「なるほど……」 爺さんはどす黒い魂をしていたので、こいつが首謀者なのは分かったが、逆にどう攻めたらいいのか困ってくる。 イザリ屋とすれば依頼があった以上全員執行だが、魂が黒でない飾磨は、利用された可能性もある。 だからと言って今までの罪は消えないし、村の人だって納得しないだろう。 瑠里は何かを感じ取ったのか、まさかアイツ悪者じゃないとか言わないよね?と確信を突いてきた。 「黒以外の色だけど、結果的に同罪だよね」 「世間知らずを騙す老人って卑劣だわ、子供の殿を陰で操る家臣みたい」 最近見た時代劇で似た話があったが、そんな事より敵を何とかしないと数が増えてきているし、マズい空気が伝わってくる。 「悪魔を帰しては……ならぬ」 飾磨が呟くように声を出すと、顔つきが変わり目は無機質で視線はこちらを向けているが、心ここにあらずと感じだった。 「――ぐっ!」 身体を動かそうとしても固まったように自由が奪われ、瑠里がススーッと吸い寄せられるように、飾磨側に誘導されていく。 自分ではジタバタして叫んでるつもりだが、何も変わらないのがもどかしいし、これを解かなければ助ける事は出来ない。 『瑠里――っ!』 こんな簡単にピンチが訪れるとは予想だにせず、瑠里が椅子に座らされてベルトで身体を固定されると、焦りと怒りと恐怖で我を忘そうになる。 『――冷静にならんか!』 心に投げられた声にハッとすると、隣にいる朧もジッとしているが、動けないフリをしてるように見える。 何故なら私の位置は全く変わってないのに、朧が見えるという事は、狐が動いたとしか考えられない。 でも今は瑠里を危険に(さら)したくないし、このままではそうなりかねないので、落ち着きたいが焦りで空回りしている。 一刻も早く動きを取り戻し、あの場所に瞬時に辿り着いた後、周りにいる者全員を灰にしないと気が済まない。 恐らく固定されてる忍者探偵の方が強く思ってるに違いないが、目の前の光景がチラつき、いつもみたいに意識を集中する事が出来ないでいた。 すると(ふところ)で眠っていたイナリが顔を出し、あくびをしたのをきっかけに身体が軽くなり、全身にこんなにチカラが回っていたと気づく事が出来た。
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