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瑠里の懐にはキセロが入ってるので、危険なのは敵かもと考える余裕が出てくると、見つからないようチビチビと歩幅を進めていた。
瑠里は頭の辺りでお経のような言葉を唱えられ、儀式でも始まるといった雰囲気で、白い布を被されキセロが上手くカモフラージュされている。
飾磨は表情もなくそれを見つめているが、相談役は手に器具を持ち、助手のじじい二人も魂は真っ黒。
そいつらから執行していくとしても、最低五人いるので、飾磨はこいつらに利用されていた可能性もあり複雑な心境になる。
でも榎原さんや住人の事を考えると、余計な感情は邪魔になり、足元をすくわれそうな気もしていた。
お経が終わると白い布が外され、瑠里の右腕辺りに相談役が移動し目を閉じて何かを言っていたが、そのチャンスを逃す事なく瞬時に走った。
「……念仏唱えたまま灰になんな、じじい」
背後に回り双棒から出した刀を振り下ろすと、相談役が灰となって消え、飾磨がこちらに手を翳す。
すると素早くキセロが大蛇の姿に戻り、瑠里はベルトを引きちぎって胴体に飛び乗った。
「もう変な念仏は効かねェからな、お前ら全員の葬式を速攻で終わらせてやる」
天上を走って逃げ惑う河童は瑠里とキセロが、地上は私が双棒や犬螺眼を使って減らすと、飾磨は観念したのかその場を動かなかった。
「私らは貧しい環境で育ったけど、金があっても心が貧しいのはタチが悪いね」
「お前は地獄から来て、俺を『救いに来た』悪魔なのかもしれんな」
「おしいけど、この人は般若だから鬼系列だよ」
瑠里を睨むとドアが外側から開き、社長や滋さんが入って来て皆無事に脱出し、村にシステム導入作業も開始したと告げられた。
「その前に、こっち助けに来るのが先だろうが!」
「まずは負傷者や病人優先で、怒り狂った般若と妹が建物を崩壊させたら危険だからの……」
毎度のように言い合いをしていたが、滋さんは飾磨に近づき双棒を出したので、思わず声をあげた。
「なんで?許可下りてるし、こいつも加担してたんだから終わらすべきだよ」
言われた事は間違いないし、飾磨も下を向きその時が来るのを待っていたが、何となく腑に落ちない自分がいた。
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