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「こいつは……いつの間にか利用され、気づけばこんなにも罪を犯してるのに、償いの期間さえ与えられないんでしょうか」
依頼があれば敵を執行するのは承知しているし、話し合いが無理だったり魂が黒い奴には言わないが、残虐な事をしてきたとはいえ魂の色が違う。
『罪を認め償いの時間を与え、榎原さんみたいな想いをする人が出ないよう、心に刻んでもらう』
私達は世直し人でもないし改心させる事なんて出来ないが、自分で間違いに気づき悔い改めれるならと、反した思いが頭を交差していた。
こんな奴執行すべきだという気持ちと、操られてたんだから、自分で考える時間をもらうべきなんじゃないかと。
「百合さん、以前にも言いましたがワシらの仕事は……」
「分かってます、ただこんな奴でも魂が真っ黒になってないのは……と考えてしまって」
社長はため息をつき何処かに電話をしていたが、滋さんは冷たい視線で見据えている。
「意外と甘い部分があるよね、拷問も平気な残虐な奴は執行しておくべきだよ」
「自分でもそう思いますが、なら何故抵抗してこないんです?暴言吐いてかかってくればいいのに」
諦めたように腰を下ろし床を見つめる瞳は、何もかも失った彼にとって当然ともいえるが、心臓の辺りで揺れる濃紺の炎が気になってしまう。
「恐らく包帯だらけの女性は、飾磨が治そうと細工を加えた筈じゃ」
「――えっ?!」
拷問して殺したりしてたのに、一方で治療をするなんて意味が分からず目を丸くしてしまう。
「能力のせいで普通と違う扱いを受けておったんじゃろ、ワシらの所だと優遇されたのに、初めに気づいた大人が悪すぎた」
朧はもとの老人の姿に戻っていて、飾磨に語りかけると、一瞬こちらを向いてから視線を下ろした。
「丁度いい迎えが来たと思ってる、俺のような魔物は葬られるべきだ」
「そうでもないぞ?世の中には化け物は沢山おるし、アンタも今しがた出会ったじゃろが」
『おいっ』とツッコミを入れるように妹と同時に朧を見たが、話の腰は折らない方がいいと堪えていた。
飾磨は私達の動きを封じた奇妙なチカラがあり、恐らくそこに目をつけたようだ。
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