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「ワシは狐人間の中でも選ばれし者で、嘘や隠し事は通用せん、しかしお前の能力を最大限に発揮出来る環境は備えておる」
何気に自慢を織り交ぜてスカウトする姿は、ウチの社長と被るが、モノホンの狐はそれ位言っても説得力があるので黙っておいた。
「俺は……」
「自分を化け物だと気に病む事はない、この世界しか知らないだろうが、その能力はいずれ来る本当の悪魔に対抗するのに役立つだろう」
瑠里に肩を叩かれ振り向くと口に手を当て、噂好きの主婦のようなポーズでププッと笑い出すので首を傾げた。
「スカウトからの予言、どんだけのスケールで口説いとんねん、しかも私らを化け物扱いしてダシに使うという」
「笑いごとじゃねーよ!こっちも否定したいけど今そんな空気じゃないから黙ってるだけ」
「あ―あぁ、せっかくだから皆で名乗りの練習したかったなぁ」
大事な話の途中なのに飽きてきたのか、瑠里は忍者探偵の挨拶シーンをする暇がなかったと、愚痴を零していた。
今回は救護班も結構な人数が居て、中でも防護服に大きなマスクで部屋を消毒する、ふっくらとしたシルエットが目に留まる。
「あれボンレスじゃない?ヘルプに入ったのは絶対食べ物狙いだよ」
「食べ物の事しか頭にないもんね、優勝賞品も奪われないように気をつけないと」
部屋を出ようと歩くとゴーグルを外したボンレスが、聞こえていたのか反論をしてくる。
「食べ物の事ばっかはお前らだろうが、俺は純粋に仕事で来てんだよ」
「ボンボンと違って食べた事ない物が沢山あるし仕方ないでしょ、さっさと仕事に戻れ!」
文句を言い仕事をするボンレスを横目に見ながら、通路を出るとやっと外の新鮮な空気を吸えた。
「部屋に戻ってシャワーしたら何か食べよう」
シャワーを終えると王子達は毛繕いをしてからオヤツを食べていたが、瑠里は冷蔵庫にあるホールのモンブランを取り出し、満面の笑みを浮かべていた。
「あ、カットは二つ追加で」
いつの間にか部屋に朧と桜舞が入り、ソファに座る姿を見て瑠里が顔が引きつったが、渋々切り分けていた。
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