92人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやぁ楽しかったです、いい経験をさせて貰いました」
ケーキを待つ間、朧は卓球でもして軽く汗を流したような言い方だったが、同意する事が出来ず苦笑いで誤魔化した。
「忍者探偵でしたかな?このメンバーだとチームワークよく活動出来るかと……」
「えっ、俺はそんなのやだよ、何かダサい」
桜舞が地雷を踏み、私ですら思っていても口には出してないのにと静かに俯いた。
「ふん、お前らみたいな変装狐をメンバーに入れてやるもんか!リーダーとしてお断わりする」
ケーキ皿を盆で運びながらムキになって反論する妹に、まぁこいつら原作知らないしと、自分の事は棚にあげ宥めていた。
テーブルに置かれ全員でいただきますをすると、明らかに瑠里が一番大きかったが味は本当に美味しくて、今まで食べた中でダントツの一位だ。
「栗が前面に出てるのに、こんな上品なモンブラン食べた事ない」
「確かにこれは贅沢ですな、生地にもふんだんに栗が使われています」
桜舞はすぐに食べ終えてしまい、次は私の栗どらを食べようと催促してきた。
「試合に負け手伝いもしてないのに、褒美を貰おうとすんじゃないよ!どらやきは朧にだけ権利がある」
大きな箱に入っていたが母にも少し持ち帰ってあげたいし、戦利品なのでタダで渡してなるものか、が貧乏一家の常識だ。
ケチと罵られ、羨ましそうに見られたが、澄ました顔で彼以外のメンバーでどら焼きを堪能していた。
お茶をくんでいると、朧が不意に姉妹は先程のような戦いは初めてですなと言われ、瑠里と顔を見合わせる。
神と呼ばれる狐に嘘をついてもバレるし、実際に現場で瑠里が椅子に引き寄せられたのを見ているので誤魔化しようもない。
「ああいうの使われると厄介でしょ、百合さんは眼でカバー出来る部分もあるが、瑠里さんはどうやって解いたんです?」
「……忍法、気合い」
苦しい言い訳だが、私はイナリのおかげで妹はキセロがきっかけで身体が動いた気がする。
それでも毎回現場に連れて行かないので、ラッキーだったとしか言いようがないが、次回からはそうはいかない。
殺られてしまう確率がグンと高くなるので、戻ったら最優先でトレーニングしないと、今の生活環境を終える事になるからだ。
最初のコメントを投稿しよう!