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「コヤツに食べさせておけば、将来商品として還元されるかもよ」
殴ろうとした手を引っ込めると、瑠里は花火はどうしたとまともな事を聞いてきた。
滋さんがドアを出し一旦職場に戻ったが、消毒の通路はキツネ面だけが通りパネル操作をすると、次に扉を潜った時は見た事のある城の庭に入っていた。
歩兎さんに案内されたのは前回の会議室ではなく、別棟でまだ入った頃のない場所だったが、仕事が終わったなら何処でもいいので一息つきたい。
大きな部屋のカーテンを開けると城の全貌が見え、水辺とのバランスも良く旅行に来た気分だが、何処で花火が上がるのかはよく分からない。
窓は殆どガラス張りなので、ここは観賞用の部屋だと思われるがこうちゃん達の事なので、様々なシステムで守られてると想像される。
ドアが静かに開くと蕩尽さんがワゴンを押し、コーヒーとサンドウィッチ等の軽食を運ぶ姿を見て、瑠里と王子達がソワソワしていた。
「皆さまお疲れ様でした、ゆっくりお寛ぎ下さい」
社長達は余所行きの顔で軽く会釈をしているが、食べ終えたら移動して、花火を見るのかと一人で気になっていた。
瑠里達は軽食を沢山頬張り、歩兎さんが引きつって様子を見ていたが、私は飾磨のその後や朧の言葉が頭を過り出す。
敵のレベルが上がっていくとパワーは勿論だが、人に近づくにつれ変な技や武器を使ってきて危険度も増す。
やはり無色チームにいて、ドンパチやってた方が良かったのではと、後悔や不安な気持ちも押し寄せてきた。
重いため息をついていると歩兎さんが寄って来て、和菓子はイザリ屋に預けてありますのでお持ち帰り下さいの声で、少し頭が軽くなった。
「深刻な顔をせずとも、姉妹は巻き込まれる事が多いが、よくこなしてると感心とるんじゃよ?」
「こなしてなかったら、ここで息してないんだろ、どーせ」
「そんな般若顔して睨まなくても、このケーキ美味しそうでしょ」
見ただけでカボチャだと分かる濃厚そうなスイーツに思わず手が伸びたが、シレッと般若と言われてるのは気にいらなかった。
ボンッと何度が外で音がしたかと思うと、城全体がプロジェクションマッピングで縁取りがライトアップされ、花火が次々と打ち上げられた。
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