海辺でシェアハウス

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仕事は焼きそばとかき氷の売り子だが、海水浴で賑わってるので多忙な上、食事は弁当か材料を店主から買って自炊らしい。 お金は駄賃から引かれるシステムで抜かりもなく、そうなってくると私達と同じく貧しい感じを想像したが、その世界のトップなので裕福だと言われた。 「ん?河童の世界はこうちゃん達がトップに関連あったような……」 木村さんの話に違和感を覚え思わず質問してみる。 その世界は海が綺麗で白い砂浜が広がり、大きな花火祭りも開催されると、違うアピールではぐらかされる。 「えっと一つ確認なんですが、河童の世界ですよね?」 同じく妙だと思った隣の忍者探偵は、ズバリと確信をついた誤魔化しようのない問いに変える。 「いや、河童……ではない」 『どこの世界だ!』 心で嫌な予感が過った瞬間、バタバタと足音が聞こえキツネ面が慌てたように姿を現し、ため息が漏れた。 「キム、マジで?ドケチで傲慢と有名な豚の世界に姉妹を行かせるなんてさ、あの海の家はバイト男子とルームシェアじゃん!ひと夏のヤラシい体験しか……」 「一人で盛り上がってんじゃないよじじい、お前のせいでこっちは又死にかけたんだろうが」 いつものように注意してみたが、キツネ面の社長の言葉を整理すると、ドケチで傲慢な豚という事になる。 「豚ってどういう事?ウチの啄見ても、水中で機敏な動きなんて無理そうだし、浮き輪代わりにしかならない」 この場に啄がいたらキーキー文句を言いそうだが、私も同じ意見だし偉そうな豚なんて見たら、怒りに我を忘れそうだ。 「でも河童が忙しいから仕方ないし、百合達が勤務で安全なよう少しでも練習させたいと思って」 シリアスな顔で心配する言い回しだが、こうちゃん達を河童と呼び捨てているので、微妙にイラッとしてるのが分かる。 社長は部屋を出てしまうし、何故か木村さんを宥める感じになり、コーヒーを勧めるとポロッと漏らした言葉で私達の目つきが変わる。 「あの兄弟初コンパで、どっちが持ち帰り出来るか競って部屋から出て来ないらしい」 ピクッと動きが止まると、木村さんは手に口を当て誤魔化すように、飴玉の包みを開けていた。
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