疑似新婚生活

2/30
90人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
犬や猫を連れた子もいたが、イナリの目つきが変わった気がしたので、慌てて船内のクーラーの効いた場所へ移動する。 「王子、喧嘩売ったり襲ったり食べたりしないでよ?役者魂でいこうね」 スルメをあげながらそう言うと、分かってる大丈夫だと言わんばかりのドヤ顔が返ってきた。 終点は一気に景色が変わり、陸の孤島で寂しい気分になるが、みんな目的地に向かい無言で歩くので後ろをついて行く。 パッと見は人に近いので何人間か分かりづらいが、とりあえず河童人間と豚人間は身体の特徴で分かる。 河童は水掻きが指の間にあるし、豚人間は体型で分かるがその他は全く分からない。 賊がどの女子とペアか聞いてないが、見たらすぐに分かると言っていたので信じるしかない。 少し歩くと洋館が見えてきたが、ホテル並みに大きいので逆に、どれだけこのイベントに力を注いでるんだと不思議に思ってしまう。 推理小説で事件が起こりそうなロケーションなので、周囲に何があるのかも確認しておきたい。 受付で名前をいうと番号札付きの鍵が渡されたので、そこがこれから生活する部屋になるようだ。 男性陣はもう来ているので、部屋の中にいるか外を回っていると適当な案内をされ、女性陣は解散となった。 「十五分後に立食で食事が用意されますので、皆さん参加して下さい」 この島にどんな食べ物屋さんがあるか分からないし、せっかく食事がついてるなら参加して、腹を膨らませておきたい。 四〇一と書かれたプレートを見て鍵を開けると、広々としていてキッチンもあるし、リビングの他に部屋も二つあるので暮らすには十分だ。 ソファの近くに荷物を置いて冷蔵庫をチェックしてみると、ウチよりも全然豪華で持ち帰りしたい位だ。 「見てイナリ、高そうなアイスもぎっしりだし毎晩食べれるね」 イナリはキッチン下のドアを前足で押さえるので開けてみると、パスタやお米の他に、スナック菓子やクッキーも入っていた。 「凄い、ここ天国じゃん」 足を踏み入れた時は殺人事件が起こりそうと警戒していたのに、食料を見ただけでいい所かもと思える、貧乏人の変わり身の早さに自分でも驚いた。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!