花火大会の前に

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会場には応援として数人紛れ込み、透水も現場に来るので見張りもつけ、許可は出ているので騒ぎになれば人気のない場所で執行する。 ターゲットは飾磨(しかま)といい、河童人間でも残虐性が強く、拷問して殺すのも遊び感覚で楽しむ外道らしい。 そこまで知っていてなぜ捕まえないのかと思うが、無暗に攻めても返り討ちに合うのと、そのエリアはシステム導入を拒否してるので現地でないと状況も把握しづらいようだ。 「あの、今までの話だと強そうなんですが、私達で大丈夫なんですか?」 一応抵抗してみるがもう挨拶代わりと思われているのか、サラリと交わされてしまう。 「空蝉屋からも河童の世界からの依頼も、百合達をメンバー入れて欲しいと要望があったからね」 少し逆らってくれてもいいのにと嫌そうな顔をすると、そこの栗は絶品で一度は味わって貰いたいし、場所が忍者の里みたいで面白いよと誘惑トークは怠らない。 「イナリも久々に山を駆ける事が出来るし、栗……いいよね」 「本物の忍者探偵気分を味わえそう」 お互いに動機は不純だが、もう行く気になっているので木村さんは既に準備が終わったリュックを渡し、パネル部屋に向かった。 扉を潜るとやはりイタリアを思わせる風景だが、ここから少し移動すると、忍者の里というのは興味も湧いてくる。 指定されたホテルのロビーで歩兎さんと、何故か隣に滋さんがいてビクッとしたが、イベント参加者の周辺は死神が担当らしい。 「金刺繍がボディガードなんて相当ヤバいって事ですよね」 「またまたぁ、百合ちゃん神経質になるんだから前にヘルプで入ったでしょ、刺繍の色関係ないから」 死神コンビが揃うとロクな事がなさそうなので、渡されたキーを受け取ると瑠里と部屋に向かい、お茶に誘われたが関わりたくないので断った。 「ケーキぐらいは食べれたかもよ?」 「瑠里は知らないだろうけど、歩兎さんテーブルマナーうるさくってさ、食べた気しなかったから面倒で」 寝る支度をしながら話をしていると、器の小さい男だねおいしく食べるのが作った人の願いなのにと、ベテラン刑事風に窓を背景に呟いていた。
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