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河童の里で栗拾い
翌朝は顔の真上に視線を感じ王子に起こされたが、既に経験しているので、身体が覚えていたのか条件反射で餌の準備をしていた。
キセロもやってみたようだが瑠里が起きる筈もなく、ついでのようにイナリの隣で待っていた。
「ホ――ントちゃっかりしてるよね、そのしたたかさだと世の中上手く渡って行けそうだよ」
テヘッと可愛い顔を向けるサービスも忘れてなかったが、私はそんな薄っぺらい建て前では騙されない。
「無理から愛想振りまかなくてもいいって、性格悪いの知ってるし、一緒に暮らしてんだから餌くらいあげるから」
水をかけられた仕返しに瑠里が起きるまで待たそうかとも思ったが、それまで頂戴アピールが続きそうだし、大蛇の世界のトップにチクられても嫌なのでこうするのが無難だ。
イナリは凱に告げ口をするタイプではないが、キセロは大蛇の姿の時から塵里にコソコソ耳打ちしたり、テレパシーで状況報告している。
瑠里と一緒に住みたいという理由でトイプードルとチワワのミックス犬に姿を変えて貰ってるが、本体と性格を知ってるので可愛いと言えないし、奴も私の事は気に入らない筈だ。
それでも鷹の世界では助けて貰っているので前ほどではないが、関係が前進したと思っていたのに、昨日の水かけ攻撃だ。
侮れない大蛇だと餌を食べる姿をガン見していると、瑠里が起き上がりまだ眠いのか目元を擦っていた。
「今日は伊賀の里に行くんでしょ、忍者服で行った方がいいのかな」
「忍者を一旦頭から消したら?イベント会場に行って状況を見に行くだけじゃん」
今日はつなぎではなく普段着に見える防護服だが、怪しまれない対策もバッチリで、デニムとスウェットなので気が楽だ。
栗拾いに行くのにお洒落な服を着ても、何の虫に刺されるかも分からないし動きにくい。
ひざ下丈の長靴も入っていたが、異常に軽いのでイザリ屋仕様なのが分かる。
双棒はリュックの中にケースで収めれるようになっていて、パッと見では分からないが、底にファスナーがあり緊急時はすぐに取り出せる工夫もされていた。
見た目はハイキングする旅行客の完成だが、イナリ達の服も防水の軽いベストタイプがあったので選ぶと、一家で来ましたと写メに残したい位だった。
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