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「用意、始め――っ!」
説明役の声が響くと皆栗林に向かって走り出したが、私達は入口付近で止まって拾いだしていた。
「手前にも沢山落ちてるのに勿体ないよね、これは一粒が大きいから取りやすいわ」
通常なら両足でイガを開き中が見えると取っていくのだが、ここのは実が大きいので隙間から栗が顔を出している。
観光客らしき人はイガごとトングで挟みカゴに投げ入れていたが、地元参加者と私達は中身を出し、かさが増さないよう抜かりはない。
その際虫食いがないかもチェックし、不要な栗は除いておくのがポイントで、後々食べる時に余計な作業が減るからだ。
黙々と拾ってカゴに投げていたが、イナリが隣で手元をクンクンと嗅いでたかと思うと、イガを広げる手伝いをしてくれ笑みが漏れる。
「さすが王子も山育ちだけあって上手だね、有難う助かる」
中身の栗を取ると次のイガを広げてくれるを繰り返していたが、段々スピードがついてきて、楽しみながら拾っていた。
一杯になってくると計量台に運ぼうと瑠里をチラ見すると、背中をみつけたので安心して移動し空になったカゴを背負った。
観光客達はイガごと入れてるので、すぐに満杯になって台と栗山の往復を繰り返している。
瑠里に近づくと一杯になったのか立ち上がっていたが、栗がイガから出してあり山積みなので、両手で入れるだけの状態になっていた。
「凄いね瑠里、まだ沢山あるじゃん!」
「ふふん、当然じゃとも!モンブランは忍者探偵Ⅹの物じゃ」
台で素早く計量をしすぐに戻る忍者を見ていたが、キセロがせっせとイガから出し、歯型が栗につかないよう甘噛みしている姿がウケる。
「キセロも協力するなんて、さてはモンブラン好きなんでしょ」
私も手を止めず栗を拾っていたが、例のテヘッという顔をこんな時でも忘れずポージングしてから作業に戻っていた。
王子達のおかげで更に捗り私達も計量の数字は大きくなっているが、そこへ狐二人組……というか朧・桜舞ペアが後に続いていた。
「しぶとい狐だね、去年ハチマキが負けたのってあいつらなんじゃない?」
「ありえるねそれ……」
桜舞はスイーツバカだし朧もこのイベントは好きそうだが、神と言われる狐人間がこんな所で栗拾いかと思ったが手は休めなかった。
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