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制限時間が迫ると皆奥まで走るのが辛くなったのか、結構取りつくしたのに手前のイガを拾い始めたので、逆にダッシュして人のいない場所で沢山取っていた。
「取り放題じゃ――っ!慣れてない者は要領が掴めんようだわ」
地元の人も私達と同じような動きではあるが、疲れは出ているようで、ウキウキしてるのは私達と狐のグループのみだ。
ラストまで満杯にしたカゴを持って走っていたが、数字は私達が僅かに上回って優勝する事が出来た。
「姉さん!モンブランが食べれるよ!」
嬉しそうにジャンプする妹を見て地元の人達も微笑んでいたが、私は恥ずかしくて俯いていた。
「あと数グラムだったが……今回は負けてしまいましたの」
白々しく狐チームが近づいて来て、私達の取った栗を眺め勝因を突き止めようするのは、来年への意気込みすら感じられる。
「虫食いの栗よけました?」
「いや……そこまでは気が回らんかったの」
「甘いんだよ、普段自分達が食べる為に取ってる人なら常識だし、お手伝いさんが後で抜いてくれてたんでしょうね」
ボンボン育ちに冷たい視線とドヤ顔を決めると、素直に驚いた表情で納得され逆に気持ち悪い位だ。
イベントが無事終わると近くにいた地元のおばさん達と話をして、この後振舞われる栗料理や、スイーツを楽しみにお茶を飲んでいた。
王子達もワクワクとした表情だし、甘い匂いが鼻を擽るとまずは栗ご飯を手渡された。
いつも瑠里は食べないくせに美味しそうなのか、スプレーをしてから嬉しそうに食べている。
王子達にも分けてあげて和やかな雰囲気だったが、ふと掛けられた声に耳を疑ってしまった。
「お連れの人は先に車で帰ったが、アンタらはここにいてええんかの?」
「――えっ!」
「置いて帰りやがったんですか!」
朧が気を回して教えてくれ、イザとなれば扉を出し自力でも帰れるが、頼んでおいて置き去りにしたあいつ等には苛立ちを覚える。
「こんな扱いだよ貧乏人なんて、利用だけされて用がなくなったら終わりでさ!」
文句を言いつつ頬張っていると隣にいた女性が、大したもてなしは出来ないけど、今夜ウチで寝ますかと聞かれ素直に甘える事にした。
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