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会場からつけて来てここに泊まるのを阻止する目的は、住人から余計な事が漏れないようというのが一番だろう。
私達は空蝉屋の代理でイベントに参加したので知り合いだとバレているし、何事もなく帰したいというのが本音なのも分かっている。
もしそうでなければ面倒なので何処かに監禁され、殺されて終わりだったかもしれない。
ただ、案内役以上に役者なのは王子達で怪しい空気を持ってるこいつに威嚇する事もなく、普通のペットに徹しているのが不気味な位だ。
徒歩十五分くらいの場所に城が見えてきたが、人の気配が少ないようだし、普段は使われてない建物のようだ。
飾磨はここにいないかもと内心ガッカリしていたが、中に足を踏み入れ少し経つと違和感を覚えた。
『なんだこの……胸騒ぎは』
部屋に案内され、食事の時間やシャワー室の説明の時もずっと変な感じが消えない。
案内人が去った後に溜め息を漏らすと、瑠里は口許に指を当て、余計な事を話すなと言わんばかりだ。
ここはシステム導入を拒んでいるのて考えられるのは、瑠里が大好きな忍的な盗み聞きや、部屋自体に仕掛けがあるのかもしれない。
瑠里はキセロに耳打ちすると、クンクンと匂いを嗅ぎ部屋中を回っていたが、その様子を冷たい視線で見守っていた。
『盗聴器を機械で探すならまだしも、犬……いや、大蛇で分かる訳ないやろが!』
瑠里も壁を調べなりきり忍者探偵になっていたが、テーブルに置かれたオヤツをスプレーし、イナリと口に運んでいた。
一時間ぐらいして不意に呼ばれ、壁に小さな穴が四か所と天井にスライド部分が二か所とノートに書いていて、蛇みたいに執念深く突き止めた瑠里にオヤツを渡した。
キセロとドヤ顔を決めた後、次はそちらの番ではと言わんばかりの視線が刺さり、イナリと部屋を出て散歩という名の城探検に出る事にした。
敷地に出ると芝生の辺りから生臭い匂いがしたが、何もないし、パターゴルフに良さそうな場所なだけだ。
チカラを使ってるので犬並みの嗅覚で、隣には本物がいて同じ反応なので、間違いはないと思うが不思議な感じだ。
「もしかして地下かな……」
城と言えば地下室や牢と洋画の見すぎだが、そうなると辻褄が合ってくると、イナリと入口にダッシュした。
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