河童の里で栗拾い

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ところが一階から地下に通じる場所はなく、アテが外れ中庭でも散歩しようとすると、イナリがダッと走り出し反射的について行った。 庭の先に勝手口のようなドアがついていて、上の柵部分から覗いてみるが、とても台所には見えず暗い石の道が続いている。 そして鼻をつく嫌な臭いも微かにしているので、かなり怪しいが鍵がかかっているし、一旦引き上げる事にした。 部屋に戻り瑠里にこっそりと伝え、木村さんにメールを送ってみたが返信はこず、妹は小さなリュックを背負っている始末だ。 「まさか行くつもりじゃないよね、鍵かかってるし勝手に入ったらヤバいよ」 「勝手じゃなくて、偶然という事でいいじゃん」 そういえば犬の世界で八雲さんが、裏のドアを小さな道具で開けるのを見たが、私はあんな器用な真似が出来る気はしない。 瑠里は既に入口で待っているので渋々後に続くと、先程の中庭まで案内しドアを確認出来た所で、柏餅を出したので慌てて止めた。 「こっそりどころかバレバレやろが!八雲さんみたいに盗人スタイル出来るのかと思うじゃん」 「時には大胆になるのも忍者探偵には必要な事じゃ!」 理屈は分かるがまだ何の証拠もなく、ドアを壊したと責められるだけだし、弁償はどうするつもりかとお金の面で攻めてみた。 「うむ……確かにまだ何も見つけてないし、金取られるかもね」 『かも』ではなく絶対だと断言すると、瑠里はドアの隙間から中を覗きバッと顔を背けた。 「なんか……クサッ!異臭がする」 イザリ屋のマスクを着用し庭に戻ろうとすると、私達と同じ格好をした娘が近づいて来た。 「潜入に苦戦しておるようじゃの、優勝の景品おすそ分けしてくれたら、協力してもええぞ」 どこから見ても娘さんなので、このパターンには毎度ながら驚くが、モノホンの狐の変身ぶりに脱帽するしかない。 何でここにとか、何故同じ格好を等の質問も好奇心と返答されると分かるので、あえて聞かないでいた。 「仕方あるまい、まだ盗人の修行が足りないようだしモンブランは少し譲ろう」 「そんな修行いらねーよ!」 でも朧達と誘拐された時に目の前でチカラを見せて貰らった際、鍵のかかったドアがスッと開いたのを思い出した。
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