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海辺でシェアハウス
「焼きそばお待ち――っ!」
頭にタオルを巻き焼きそばの入ったビニール袋を両手に提げ、客に手渡すオッサン……いや妹は楽しそうだが、私は早く家に帰りたくて仕方がない。
なぜ姉妹でこんなバイトをする羽目になったかというと、二週間前の執行の時に毎度ながら死にかけたからだ。
地上や空でチカラを使う事には少し慣れてきたが、元々泳ぎが得意ではないという事もあり水場は苦手。
にも関わらずヘルプに行けと指示した社長のせいで、敵に水中に引きづり込まれ溺れそうになった。
しかしタダでは倒れないしぶとい私達は、水中でもチカラを使えると分かり、難は逃れたが水に対してのスキルを上げたいと思い立つ。
河童の世界の『こうちゃん兄弟』からチカラを貰っていたので、ゲーム方式でいいから訓練を頼もうと、木村さんに交渉をお願いしていた。
だが返事は多忙を理由に断られたようで、かなり焦っていた。
確かアイツらは防犯システム等の開発者で、引きこもりかと思っていたが、頭を使って大変そうだったのを覚えている。
かといってこちらも死ぬ訳にいかないので、藁にでも縋る気持ちで再度お願いを任せた。
「意外と般若の顔パス効かないんだね、ちょっと失望した」
「誰が般若だ!でも忙しいって何かあったのかな?アイツら基本部屋から出ないのに」
執行が終わりシャワーと着替えを済ませ、いつもコーヒーを飲む習慣になっているので、指示された部屋に入りカップを手に取った。
少しすると冴えない顔をした木村さんが顔を覗かせるので、首を傾げながら聞く態勢に入る。
どうやら断られたが代わりに、自分達と同レベルの知り合いを紹介すると譲歩してくれたらしい。
すぐに連絡をしたところ、かなり上からの口調で、海の家の経営者らしいがバイトを手伝うなら教えてやってもいいとの事。
期間は一週間で訓練は営業時間外、仕事を真面目にこなせば少々の駄賃と住む場所は用意するが、他のメンバーとシェアという条件だそうだ。
「偉そうな河童、略してエラ河童だね」
瑠里は楽しそうだったが、どうやら話には続きがあるようで、木村さんは言いづらそうな表情だ。
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