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「いや……あの……」
明らかに戸惑っている。その戸惑いに、私も困惑した。
「……もしかして、初めから盗るつもりだったのか?」
「違う! 僕……客を取ろうと思ったけど……恐くて、でもお金がなくて……仕方なく……」
尻窄みに言葉が消える。恐くて? では、コヴィは。
「まだ客を取った事がないのか?」
「……うん。アンタに会った日、初めて客を取ろうと思って……やっぱり、お金を盗ったんだ。恐くて、心細くて、誰かに抱き締めて欲しかった所に、アンタが眩しそうに虹を見上げているのが見えて。思わず抱き付いちゃったんだ」
私は自分の中の保護欲が、ますます大きくなるのを意識した。この幼さの残る少年は、まだ誰にも身体を開いていないのだ。
保護欲? いや、それは感じなくなって久しい、男としての独占欲だったかもしれない。
「恐いなら……私が教えてやろうか。どうやって客を取れば良いか。この商売には、知っておかなければいけない事が沢山ある」
「あ……でも、僕、お金持ってない」
「別に買って欲しい訳じゃない。教えてやるだけだ。金は要らない」
狼狽える視線に、安心させるように目元で笑むと、コヴィは耳の先まで赤くなった。
嗚呼。セックスに恥じらいを感じているようじゃ、この商売は勤まらないだろうな。そう思いながらも、私はコヴィを抱くと決めていた。
「シャワーを浴びてこい」
「あ……さっき、浴びた」
「そうか。私も浴びている。では、ベッドルームへ。コヴィ」
私は立ち上がって掌を差しだし、女性にするように手を取ってコヴィをエスコートした。誰も入れた事のない、ベッドルームへコヴィを導く。
立ったままシャツのボタンをゆっくり外して脱がせると、コヴィは紅茶色の巻き毛をふるふると揺らして震えていた。
「恐くないぞ、コヴィ。優しく愛してやろう」
少しでもコヴィがリラックス出来るよう、私は饒舌に会話を続けた。私もチェスターコートとシャツを脱ぎ落とし、キングサイズのベッドにそっと押し倒す。
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