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「そう言えば、何故相場を知っていた? 客に訊いたのか?」
「お腹が減って道路に坐り込んでたら、男に拾われたんだ。上納金を納めて、男娼として働かないか、って」
「なるほど。そこにはもう、帰れないのか?」
帰す気などさらさらなかったが、話のついでに訊いてみた。
「うん。僕がお金を盗ったって、客が男に言ったから……また、捨てられた」
「心得その一。客とキスはしない事。するとしたら、金を取ってしろ。客とキスをすると、愛情があると勘違いしてトラブルになるケースが多い」
「うん」
「だが今は仕事ではないから、するぞ。今だけは、お前は私のものだ」
「んっ……」
しっとりと潤った唇を食み、角度を変えて幾度も愛おしむ。されるがままになっていたコヴィだが、やがておずおずと自ら舌を入れてきた。
応えて、柔らかく吸ったり噛んだり舐めたりすると、掠れ声が鼻から抜けた。
何年も仕事の為に男や女を抱いてきたが、感じた事のない興奮に、私は血液がドクドクと音を立てて下肢に集まっていくのを驚きと共に受け止めていた。
どうせ顔の痣で、ジャックはしばらく客を取れない。そう冷静に考える自分も居て、首筋に赤い印を幾つか残した。
「あっ」
「心得その二。キスマークは残すな。これも、客とトラブルになる事がある。コヴィは客ではないから、今は違うが」
「あ、んぁっ」
胸の尖りを両手の親指で引っ掛けて押し潰すように捏ねると、コヴィの身体が強ばって弓なりにしなった。
「聞いているか? コヴィ」
「ん、シリウスの、意地悪ぅっ」
その可愛い非難に、思わず頬が緩んでしまう。
「聞く事も出来ないくらい、イイか。では、後で纏めてレクチャーしよう。今はただ、感じろ」
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