割れ鍋に閉じ蓋

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割れ鍋に閉じ蓋

 私はマンション六階のドアをそっと開けた。空はどこまでも青く晴れ渡って、太陽がピンクとオレンジと赤が入り混じって見えたのは白内障をを手術した為かな? たゆとおタバコの煙に目を漂わせながら過ぎ去った過去を振り返ってみた。 そうだ過去ではなく、未来を考え直してみよう。私は定年を迎えたばっかりだと脳裏に浮かぶ。 公募ガイドに「六十歳からどう生きるべきか」という川柳の募集が載っていたことがふと頭に浮かんで来た。 『六十歳、還暦、赤いちゃんちゃんこ』これを五、七、五にできないかと思い悩んだ。 シルバーセンターで駐車場のアルバイトを世話して頂いた。 区役所の駐車場で切符を渡す仕事だった。入場時刻を記録したキップを渡し、用件を済ませた課の印してもらうのである。を押したキップを帰りに渡してもらうのである。 区役所の前には孫と遊んだ公園が、私の再出発を祝福するかのように佇んでいるようにかんじた。  公園の満開の桜が咲き乱れていた。そよ風が私の頬をそっと撫でて通りすぎた。 「あっ、そうだ、出発点」としょう、と川柳が浮かんだ。 「六十は出発点だ赤ちゃんだ」これに決めた。  先輩の守衛さんが制服を着るように命じられた。     
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