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「えっ!?嫌だ嫌だ!嘘でしょ!!」
財前麗奈は朝、洗面台に設置されている鏡を見て絶叫した。
青耳
そう耳が真っ青に染まっていたのだった。
麗奈は真っ青な顔で必死に耳を洗った。だが青色は全く落ちない。
青耳
それは都市伝説で囁かれる怪異、耳がある日突然真っ青に染まる怪異だった。この怪異に襲われ、青耳となってしまった人間は他の人間、そう血の繋がった家族からさえ忌避されることが多かった。
なぜなら青耳となってしまった人間は他の人間の心の声を読んでしまうから・・・。そう青耳は別名、心の地獄耳と呼ばれていた。そう、他者の心の声を余すところなく聞いてしまうゆえ・・・。
麗奈は真っ青な顔でフラフラとダイニングへとやって来た。「おはよう」いつも通り母が笑顔で挨拶してくれる。しかし麗奈の青耳を見た麗奈の母の顔が一変した。そして麗奈の青耳に母の心の声が流れ込んで来た。
【おぞましい!我が子が青耳になってしまうなんて。私の浮気もこの娘にバレルのかしら。しまった!今私が考えていること全てが・・・】
母の顔が引き攣った。
麗奈は朝一で信じていた母の衝撃の告白を聞かされると思わず涙ぐみ、ダイニングを抜けて二階の階段を上り自分の部屋に入ると、制服に着替え、化粧をし、一目散に家を飛び出したのであった。
高校へ行く麗奈の耳を街行く人々は好奇の目で眺めた。
【おっ、久しぶりに見たな青耳の子。顔が可愛いのにこれからの人生終わったも同然だな。誰が自分の心を読む彼女を欲しがると言うのか】
【青耳か。俺は初めて見たな。それにしてもいいケツにいいムネしていやがる】
思わず麗奈はそのオッサンを睨みつけた。オッサンは悪びれた様子で麗奈から目を逸らすのだった。
麗奈はなるだけ街行く人々と目を合わさないように歩いていたが、嫌でも彼ら彼女らの心の声が麗奈の青耳に流れ込んで来た。
麗奈はとにかく高校へと急いだ。高校なら大丈夫と麗奈は確信していたから。
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