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「名前で呼ぶのは幼なじみだからだよ。それに…柊介は誰も好きにならないらしいから…」
(それで、あたしはフラれたんだ。)
2年前の風景がフラッシュバックする。雪のちらつく寒い夜だった。
「沙良は…それでいいの?他にいい人はいっぱいいるよ。」
千鶴の言い分はもっともな意見で、それは沙良も2年間感じていたことだった。
(…別に柊介に拘らなくても…他にいい人は…)
だけど、他の人と付き合う想像が沙良には出来なかった。かといって柊介と結ばれるとも思っていなかった。
「…あたしもそう思う。でもね、どうしても柊介がいいの。」
(いっそう…柊介が誰かと付き合えばいいのに。)
「そっか。沙良がいいならわたしは見守るよ。」
いつの間にか震えていた沙良の手に千鶴は自分の手を重ねる。
「ありがとね、千鶴。」
その暖かさに少しだけ笑顔で答えた沙良だった。
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