8人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
**************
柊介と合流してクリスマスの街を少し間を開けて並んで歩く。
手が届きそうで届かない距離が沙良にはもどかしかった。
「ケーキは用意してくれてるんだっけ。」
「あぁ、母さんがはりきって作ってた。」
「楽しみだな。おばさんのケーキ。」
柊介の両親は洋菓子店を営んでいて、昔から誕生日には手作りのケーキを作ってくれていたのだ。
「…いつまで一緒に祝えるのかな。」
ボソッと沙良が呟いた言葉を柊介は聞き逃さなかった。
「やっぱり…辛い?」
「友達でいて、って言ったのはあたしだよ?でもいつかは恋人が出来るし、そうなるとお互いその人と祝うから。」
街のイルミネーションを見つめながら沙良は困ったように笑う。自分で言った台詞に心が痛んだ。
(…恋人なんて出来るのかな。)
「…沙良は…」
「…え…?」
「…好きな人が人間じゃなくても…気持ちは変わらない?」
そう疑問を投げた柊介の眼が金色に光った気がしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!