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車を走らせ一時間ほど。
日はすっかり暮れていた。
車通りの多い山道から脇に抜け、砂利道の細い道を走っていくと、それらしき家があった。
私たちは懐中電灯を手に車を降りた。
噂の家は、木造の二階建て。
古いがかなり立派な家だった。
辺りは雑草が生い茂り、玄関の上には擦れた字で書かれた看板がある。
「なんて書いてあるんだろう。何とか館?」
「浄楽館だろ。きっと」
ケンジが擦れた看板にライトを当てながら言った。
確かに、よく見れば浄楽館と書かれているように見える。
「あれから少し調べたんだけど、どうやらここって昔除霊師さんが住んでいたらしい」
「除霊師って?」
「悪霊とか、悪いものを除霊してくれる人よ。名前は、八千代さんって」
ミカは、家の表札にライトを当てながら言った。
「じゃ、噂の黒い老婆の霊って、ここに住んでいた除霊師さんってこと?」
「かも?」
「どうせ、噂だって。それより、問題は中に入れるかだろ」
「そうだね。鍵とかかかってるかも」
私がそう言うと、ケンジは建てつけの悪そうなドアに手を置いた。
ガラッ
玄関のドアは、鍵もかかっておらず、わりと容易く開いた。
同時に、ホコリとカビ臭さが生ぬるい風と共に、私たちの体を吹き抜けた。
玄関の奥は真っ暗。
ケンジが懐中電灯の光を当てると、廊下の先に部屋があり、その先には扉のようなものが見えた。
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