恐怖をなくす家

2/14
前へ
/14ページ
次へ
車を走らせ一時間ほど。 日はすっかり暮れていた。 車通りの多い山道から脇に抜け、砂利道の細い道を走っていくと、それらしき家があった。 私たちは懐中電灯を手に車を降りた。 噂の家は、木造の二階建て。 古いがかなり立派な家だった。 辺りは雑草が生い茂り、玄関の上には擦れた字で書かれた看板がある。 「なんて書いてあるんだろう。何とか館?」 「浄楽館だろ。きっと」 ケンジが擦れた看板にライトを当てながら言った。 確かに、よく見れば浄楽館と書かれているように見える。 「あれから少し調べたんだけど、どうやらここって昔除霊師さんが住んでいたらしい」 「除霊師って?」 「悪霊とか、悪いものを除霊してくれる人よ。名前は、八千代さんって」 ミカは、家の表札にライトを当てながら言った。 「じゃ、噂の黒い老婆の霊って、ここに住んでいた除霊師さんってこと?」 「かも?」 「どうせ、噂だって。それより、問題は中に入れるかだろ」 「そうだね。鍵とかかかってるかも」 私がそう言うと、ケンジは建てつけの悪そうなドアに手を置いた。 ガラッ 玄関のドアは、鍵もかかっておらず、わりと容易く開いた。 同時に、ホコリとカビ臭さが生ぬるい風と共に、私たちの体を吹き抜けた。 玄関の奥は真っ暗。 ケンジが懐中電灯の光を当てると、廊下の先に部屋があり、その先には扉のようなものが見えた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加