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助走をつけて、いざ体当たりをしようとした時、カチャ……とドアノブの回る音が聞こえ、ゆっくりと除霊室のドアが開いた。
それと同時に見えてきたのは、立ち尽くすユウスケの後ろ姿だった。
「大丈夫か?」
ケンジが声をかけると、ユウスケは膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。
「おい!! ユウスケ!」
「待って!ケンジ。誰かいる……」
ミカが部屋の中に指を刺すと、そこには黒いローブ姿で腰が異常に曲がった老婆が立っていた。
老婆の背骨は、大きなこぶのようなものが連なり、何となくそれが動いているように見えた。
まるで、何かを背負っているようだった。
よく見れば、手に赤黒い肉片のようなものを持ち、口元は笑って見えた。
「あれって……、噂の黒い老婆じゃない?」
「マジかよ……。ホントにいたのかよ」
「逃げた方がよくない?」
ケンジは黒い老婆を警戒しながらも、部屋で倒れているユウスケの体を揺すり起こそうとした。
けれど、ユウスケは気絶をしているのか、まったく動かなかった。
「ユウスケをこのままにしておけないだろ……」
黒い老婆は手に持っていた赤黒い塊を食べ始めた。
ボタリボタリと、まるで果物でも食べるかのように液体が床にこぼれた。
ほんのり香ってくるその匂いは、生臭く鼻に着くもので吐き気がした。
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