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そして数ヶ月後。
再び、白雪姫が私の病院を訪れて言った。
「またわたしが世界一美しくなってしまいました。もっと不細工にしてください、お願いします」
私は先日のことを思い出しながら、
「もう王妃さまから命を狙われる危険はないのでは?」
「いえ、新しくナンバー2になったのは別の人なので。下着を盗まれたりといった被害はまだありますし……」
「分かりました」
私は、再び手術を施す。
さらに数年後。
もう見ただけで吐き気をもよおすようなブスになった白雪姫が言う。
「また私が世界一美しくなってしまいました」
泣きながら私に訴える、その顔が気持ち悪い。こんなのが、いま世界で一番美しい女性なのか、と暗澹たる気持ちになる。
「もういっそのこと、世界一の不細工にしてあげましょうか」
半ば投げやりでそう言うと、白雪姫はぱっと顔を明るくして(気持ち悪いことこの上ない)ぜひそうしてください、と言った。
こうして、白雪姫は世界一の不細工になった。
しかし、と私は考える。
もしかすると、いつかまた白雪姫が世界一の美女に返り咲く日が来るかもしれない。もしそんなことになったら、この世界は……。
恐ろしい想像を振り払い、私は窓を開け、外を眺めた。
外を歩いている女性たちの顔は、まるで干からびてカビの生えた梅干しのようで――。
今日も雲外鏡はこう告げる。
「この世で一番美しいのは……」
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