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「マジ・・・で?僕が中途半端な助け方なんかしたから!!!」
孔明がその場で頭を抱え込み跪くこと数分
バサッ
『何言ってるか分からないけど、君の責任じゃない。俺の責任だ。悩むことはない。』
『悩むよ。』
『これは天罰さ。』
孔明は疑問に思った。
「天罰?」
頷きまた書き始める信玄。
『俺は柔道部。インターハイを望めた。あの時、気づいたのは君と同じ瞬間だと思う。助けに行って轢かれたら。そう思ったら身体が固まった。インターハイは俺の憧れだった。次の瞬間には遅かったんだよ。』
孔明は書いた。
『僕は無事だ。助かった。感謝してる。恩返しだ。僕は絶対に君の耳となり声となる!うざがられたってなってやる!僕の名前は沖田孔明。君は?』
『天罰だ。そんな事、思う必要はない。武田信玄。』
信玄は困ったような顔をした
「面会です。」
ナースとともに現れたのはあの親子だった。
おずおずと入ってくる親子の父親が頭を下げた。
「この度は娘を護ってくださり、ありがとうございます。なんと言っていいのやら、本当にありがとうございます。ほら、美咲もお礼を言って。」
「お兄ちゃんたちありがとう!そして、ごめんなさい。」
「美咲ちゃん、もうお母さんから手を放したり、道路に飛び出したりしちゃだめだよ?お兄ちゃんと約束だ。」
「うん!」
「指切りしよう!」
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本の~ます。指切った!」」
笑顔が眩しい
それを遠目で見ていた信玄は悲しいような怒りのようなもどかしさを感じていた。
「お兄ちゃん、ありがとう。」
信玄の元に来た。
信玄は無言で少女の頭をぽんぽんと撫でた。そしてニッコリと声なく笑った。
「本当にありがとうございました。」
耳の聞こえない信玄は一度、困ったような顔をして、Vサインを親子に示した。
戸惑う親子。
「実は、うちの子、耳が聞こえず、声がでないんです。筆談でおねがいします。」
感情を隠した信玄の母が言った。
孔明は事故で失ったんだと言おうとして身体を傾けたが、いつか来るこの場面を想定してか打ち合わせがあったようで、母に止められ、母は首を横に振る。
筆談が始まる。
それを見ながら孔明はこれからどう過ごせばいいのか考えていた。
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