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四、かなたの闘い
「先鋒、前へ」
午後二時。
団体での一礼が終わった後、眼鏡をかけたグレーのスーツ姿の真面目そうな中年の顧問の声がかかった。
ついに来るべき時が来た。
「かなた、大丈夫だ。お前は正義の侍なんだから」
「はい」
頷くかなた。
剣道部側からは剣道衣に防具を着けた早紀子が出て来た。
早紀子は止まらずにまっすぐこっちに向かって来た。
「やめるなら今のうちよ」
早紀子の声に正座していたかなたが立ち上がった。
「私、負けませんから」
「な、なによ――」
「ふたりとも早く開始線へ」
早紀子はまだ何か言いたそうだったが、主審の声に中央に戻って行った。
礼をした後、お互い中央に来て、竹刀を構える。
そして立ち会いの前に剣士が一度中腰にしゃがむ蹲踞(そんきょ)と言う姿勢を取る。
会場内の緊張感が一気に高まった時……。
「始めっ!」
剣道部顧問によって試合開始の声がかけられた。
審判は主審が剣道部顧問の中山。
普段は理科の先生をしていて剣道経験は無いようだ。
名ばかりの顧問だけど、勉強熱心でルールブックも暗記しているって話。
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