第十八章 帰るべき場所(前編)

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 副審には剣道部の女子がふたり、それぞれ赤と白の旗を持っている。  本当の剣道の試合でも審判は三人らしいけど、今日のは特に、主審の中山が誤審した時の保険にもなっている感じだ。 「赤旗がふたり以上挙がれば俺達の勝ち。白旗が挙がれば剣道部の勝ちだ」  ハジメが呟いた。 「俺達は赤組ってことか?」 「ああ。また、挙がった旗が一本でも他のふたりが判定を放棄すれば、挙がった旗のチームの勝ちになるんだ」 「そうなんだ」 「本当の剣道の試合なら先に二本取れば勝ちだけど、今回は異種戦もあるので一本勝負になっている」 「時間は?」 「中学生の剣道は三分だ。その間に決着がつかなければ時間切れ引き分けになる」  なるほど。試合があると、色々と決まりごとが多いんだな。 「ヤァーッ!」 「ヤァーッ!」  かなたと早紀子は、お互いに凄い気合いの掛け合いをしている。  今日のかなたは前みたいに早紀子に気迫負けはしていない。  その証拠に、かなたをなめきっているはずの早紀子が中々打ち込めずにいる。  竹刀の先を合わせるようにして打ち込むタイミングを計っているふたり。 「ヤァーッ!」  先に痺れを切らしたのは早紀子のほうだった。  
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