第十八章 帰るべき場所(前編)

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五、登場、三羽ガラス!  次はマサル対楯岡。  楯岡は剣道の正装。  マサルは合氣道衣に剣道の防具を付けた恰好だ。  合氣道側も竹刀がまともに当たれば大ケガをする危険があるので、剣道部から借りた防具を着けてもいい事になっている。  そりゃそうだよな。  竹刀って軽い割に当たるとかなり痛い。稽古してる剣道部の奴らに直に打たれでもした らシャレになんないぜ。 「マサル、頑張れよ」 「オゥ、任せておけ。お前らまで回さないから」 「その意気だ。期待してるぜ」  亮の言葉にマサルは胸を張った。 「次鋒、前へ」  顧問の中山の声が掛かる。 「ヨッシャーッ!」  氣合いを入れるマサル。 「フン、うるさい小デブが」 「んだと! ぶっ殺すぞ! テメェ」 「マサル! 挑発に乗るな! 冷静になれ」  楯岡の言葉に気合いが空回りしそうになってるマサルをたしなめる亮。 「分かってるって! チクショウ。あの野郎先輩でも許さねぇからな」  って全然分かってないじゃん!  本当に大丈夫なのかマサル。  お互いに礼をして、マサルが右半身で中段の構え、楯岡は蹲踞の姿勢を取った。  このまま楯岡が立ち上がれば試合開始だ。 「始め!」  中山の号令で楯岡が蹲踞から立ち上がった。  試合開始だ。 「ウォリャー! ぶっ倒すっ!」  マサルは軽くメタボぎみな体を揺すりながら楯岡に突っ込む。 「ヤァーッ! メーン!」 「――!?」 「面あり!」 「え!?」  一瞬、俺達は言葉を失った。 「引き面……」  かなたが小さく呟く。  そう、マサルは楯岡の下がりながらの面打ちをまともに喰らっていた……。 「え!? なんだよ今の」 「勝負あり。妙心館次鋒は下がりなさい」 「な、俺はまだ闘えるっつーの」 「マサル、もういい。終わったんだ」 「……チクショー」  亮の声に、マサルは腐りながらも帰って来た。 「想像以上に速かったな」 「悪い」  マサルはきまりの悪そうな顔をして謝る。 「いや、相手の打ち込みの事だ」  亮は真剣な顔で敵陣を見た。 「次は……」
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