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「まあ、多少大きく言ってるところもあるだろうけど、あの三羽ガラスは本当に三倍段かもしれない」
確かにさっきのマサルを打った時の面は速すぎて見切れなかった。
それじゃあ俺達がどんなに頑張っても無駄な努力だったってことなのか?
「だからと言って絶対に勝てない訳じゃない」
「だってお前、さっき――」
「俺達一人ひとりでは無理だ」
それはそうかもしんないけど。
「いいか、片倉達は俺達を、特に俺をなめきっている。そいつを利用するんだ」
ハジメは何を言いたいんだ?
「俺は制限時間いっぱい、一本を取られないように動き回る」
「それって……」
「捨てゴマだ」
ハジメのヤツそんなことを考えてたなんて。
「とにかくアイツを疲れさせる。その後は長尾、お前の太刀取りで一本取れ」
「……」
「いくら楯岡でも三分分フルに動いた後は、打ち込みもかなりスピードダウンしているはず」
「でも――」
「妙心館前へ」
中山の声にハジメは立ち上がり歩いて行く。
既に楯岡は開始線のところに立っている。
きっとあの面の奥でバカにしたようにハジメを見ているに違いない。
ハジメの覚悟も知らずに……。
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