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竹刀がハジメの胴に深く入った。
しかし、またしても審判は誰も旗を挙げない。
「ホッホッホッ。また打突部がズレたか」
その後も楯岡はハジメに散々打ち込んだが中々一本を取れずにいた。
元剣道部のハジメが有効打突にならないように、ある時は逃げ、ある時はワザと前に出たりして綺麗に決めさせなかったんだ。
《ハァ、ハァ、ハァ……》
お互いの激しい息使いが少し離れた、ここまで聞こえて来る。
きっと楯岡は中々一本取れない事に苛立っているに違いない。
ハジメはどうなんだろう。
「ハジメのヤツもそろそろ限界かもしれない」
横で亮が呟く。
そう、確かに『一本』は取られていないけど、散々竹刀での打撃を身体中に受けて、もうボロボロのはずだ。
「ヤァーッ!」
楯岡の掛け声が掛かる。
《バシッ! バシッ! バシッ!……》
容赦無い楯岡の連続した面打ちがハジメに襲いかかる。
もう、まともに避けられず左右の面や肩に直撃を受けたりしている。
「フンッ、ルールに助けられておるが実戦ならとうに死んどる」
虎蔵じいさんの意見はさすがに厳しい。
俺も、もう見てられないぜ。
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