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一、闘いの前に
八月三一日、午後十二時。
合氣道妙心館道場。
ついに片倉達との決戦の日が来た。
亜美さん、亮、ハジメ、マサルそして俺の五人は合氣道衣姿で、かなたは剣道衣姿で道場の畳の上に正座していた。
神棚のある上座には白袴を穿いた虎蔵じいさんが正座して、こっちを見ている。
「いよいよじゃな」
「はい!」
虎蔵じいさんの言葉に大きく返事をする俺達。
「短い期間ではあったがお主らは良くやった」
黙って話を聴く俺達。
「後は実戦でどれだけ力を出せるかにかかっておる。会場にはワシも行くでの。安心して試合をするが良い」
「え? もしかして先生も出るつもりですか?」
「ホッホッホッ。そうしたいのは山々じゃが、それではお主らの闘いに水を差す事になるでの。今回は見てるだけじゃ」
だよな。
まあ、本音を言えば虎蔵じいさんひとりで片付けてくれればメチャクチャ楽なんだけど。
世の中そうそう甘くはない。
俺達がやらなきゃならないんだ。
正座をしてる足にも思わず力が入る。
「よし、それじゃあ先鋒から順番を発表する」
亮の声が静かな道場内に響く。
「あ、あのさ」
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