第十八章 帰るべき場所(前編)

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「それじゃあそろそろ出発――」 「みんな揃ってるね」 「愛氣!」  亜美さんの声に振り向く俺達。  お互いに駆け寄り抱き合う愛氣と亜美さん。 「もう退院?」 「ううん、まだ外出。今日はみんなのお見送り」 「そう」 「愛氣や」 「おじいちゃん」 「宏治郎と一緒か?」 「うん」 「今日は宏治郎のところにでも泊まるのか?」 「ううん、今日はこのまま叔父さんに迎えに来てもらって病院。まだ調子があんまり良くなくて」 「そうか」  なんだか虎蔵じいさんは少し寂しそうだ。  虎蔵じいさんを見ていた愛氣が視線の先を変える。 「へぇ~亮、意外に真面目にやってるみたいね」 「意外には余計だ。お前が寝てる間にこっちは稽古してたんだ。そのうち抜いてやるからな」 「ふーん、じゃあ楽しみに待ってるから」 「おう」 「愛氣」  俺は愛氣に呼び掛けたが、なぜか愛氣は俺の目を見ようとしない。  なんでだ?  俺、あれからなんか愛氣を怒らせることしたかな? 「最低」  愛氣が俺の側に来るなり小さな声で囁いた。  さ、最低って、いきなりなんだよ。 「さあ、みんな、そろそろ行かないと間に合わないんじゃない?」 「そうだな、そろそろ行くか?」 「愛氣は応援に来ないの?」 「うん。あたしはまたすぐ病院。夕方検査だし」 「そう」 「がんばってね! みんなのこと応援してるから」  そう言うと愛氣は道場を出て行ってしまった。
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