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「それじゃあそろそろ出発――」
「みんな揃ってるね」
「愛氣!」
亜美さんの声に振り向く俺達。
お互いに駆け寄り抱き合う愛氣と亜美さん。
「もう退院?」
「ううん、まだ外出。今日はみんなのお見送り」
「そう」
「愛氣や」
「おじいちゃん」
「宏治郎と一緒か?」
「うん」
「今日は宏治郎のところにでも泊まるのか?」
「ううん、今日はこのまま叔父さんに迎えに来てもらって病院。まだ調子があんまり良くなくて」
「そうか」
なんだか虎蔵じいさんは少し寂しそうだ。
虎蔵じいさんを見ていた愛氣が視線の先を変える。
「へぇ~亮、意外に真面目にやってるみたいね」
「意外には余計だ。お前が寝てる間にこっちは稽古してたんだ。そのうち抜いてやるからな」
「ふーん、じゃあ楽しみに待ってるから」
「おう」
「愛氣」
俺は愛氣に呼び掛けたが、なぜか愛氣は俺の目を見ようとしない。
なんでだ?
俺、あれからなんか愛氣を怒らせることしたかな?
「最低」
愛氣が俺の側に来るなり小さな声で囁いた。
さ、最低って、いきなりなんだよ。
「さあ、みんな、そろそろ行かないと間に合わないんじゃない?」
「そうだな、そろそろ行くか?」
「愛氣は応援に来ないの?」
「うん。あたしはまたすぐ病院。夕方検査だし」
「そう」
「がんばってね! みんなのこと応援してるから」
そう言うと愛氣は道場を出て行ってしまった。
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